愛しのオオカミ

しばらくすると、担任が入ってきて、朝のホームルームが始まる。
各列にプリントを配布する担任。


「はーい、後ろに回してね~。全員行き渡った?」


美紀は回されてきたプリントに目を通すと、そこには“進路希望調査”と記載されていた。
そのまま、残りの一枚を修へ回す。


「はい、みんなは二年生になったばかりって思っているけど、大切な進路への準備期間に入ったことを意識してね~。特にうち、森林校は進学校でもあるから、良い大学目指そうと考えている人は、しっかりと計画立ててね。提出期限は、来週の金曜日の放課後です」


(……進路…)


第一希望から第三希望までの欄が設けられているプリントを、改めて見つめる美紀。
頭には、台所に立つ小さな背中のおばあちゃんが過った。

プリントを二つ折りにすると、机の中に入れる。

朝のホームルームが終わると、一限目の現国の教員が入れ替わりで入ってきた。
号令がかかると、立ち上がって、礼を交わす。


「課題の答え合わせから入りますね~。え~、じゃあ、後藤さんから順に」


ノートを開き、課題の部分を採点していき、途中で違う解答があれば、教員が解説して正解を黒板に書きだした。
美紀は、要点として、正解していても黒板に書かれた内容を書きとっていく。

次に解答する順に回ってきたのは、亮太だった。


「~…という部分が当てはまります」

「おぉ、どうした土師。今日は正解だな」

「今日はってひどくないすか!?」


クラスに笑いが起こる中、不本意な言葉をもらって、ムスッとする亮太はチラリと美紀を見た。
目が合うと、少し笑った美紀がグッと握った拳を見せてくる。

すぐに表情が明るくなり、二パッと笑って、同じようにグッと握った拳を見せた。

それから通常授業が始まり、真面目に話を聞きながら、黒板に書かれた内容を書き写すことに集中する美紀。
亮太は時折、美紀の方へ視線だけを送るが、気づかない様子でも、何度も見続けた。

頬杖をついて書きとるフリをしながら、亮太の様子をチラッと見ては、美紀の方を見ていた修。