愛しのオオカミ

家に帰った美紀は、すぐに莉奈へ電話した。


「もしもし?」

「莉奈!?あれから何もない!?」

「うん、大丈夫だよ~。何か聞いてきた女子いたけど、テキトーに答えといた」

「私に話を振るようにしていいから…!ちゃんと言えるから…!」


それから少し話したあと、通話を切って、ベッドに倒れ込む。
不安そうな顔のまま、そっと目を閉じた。





…ー

中学生の頃、美紀がいた女子グループが対立した。


「美紀ちゃんと話しすぎじゃない?てか、ベッタベタじゃん」

「たまたま話してただけでしょ!?」

「美紀ちゃんも何か言ってよ!!」

「巻き込むなよ!!」


ただ、たまたま話す頻度が多かっただけ。
ただ、一緒の移動教室が多かっただけ。

しかし、女子グループは美紀を中心にして分裂し、お互いを罵り合った形で卒業を迎えたのだ。



…ー


当時を知る莉奈は、別グループにおり、放課後の教室で泣いていた美紀に声をかけたのをきっかけに、こっそりと仲良くなった。


(莉奈のためなら言える…大丈夫…!)


制服にシワが入る前に起き上がって着替えると、部屋を出て台所に行った。
小さく丸くなってご飯の支度をするおばあちゃんが、美紀に気付く。


「あぁ、おかえりぃ。いつ帰ってきたんね」

「…ただいま」

「あらあらぁ、何かあったんかねぇ、ふふふ」


おばあちゃんを後ろから抱きしめる美紀は、少し浮かんだ涙を小さな背中に埋めて隠した。


「ほぉら、美紀。ご飯作れんから、座って待ってんさい」

「…何か手伝う」

「それじゃあ、葉っぱちぎって」


ザルに置かれたみずみずしいレタスを見ると、袖を捲って一口サイズにちぎっていく。


「このくらいでいいかな?」

「んん、いいよぉ。食べる分だけなぁ?」

「うん…」


自分とおばあちゃんの分をプレートに盛り付けると、すかさずハンバーグが乗ってきた。
さらにその上から、半熟の目玉焼きが乗り、手製のデミグラスソースがかけられた。

腹の虫を鳴らすには十分すぎる濃厚な香りに、美紀の目は輝いた。


「美味しそう…っ」

「ふふ、ご飯よそって、座りぃ」

「うん!」


すぐに食器棚へ向かう美紀の様子を見て、おばあちゃんは肩の力を抜いて、微笑んだ。


「おばあちゃんのハンバーグ、久々だね!」

「なんとなくねぇ、今朝は元気がないように見えたから、いっぱい食べて、また笑いんさい」

「…うん…!いただきます」


半熟卵を割って、次にメインのハンバーグも、箸で半分に切る。
ほどよい肉汁があふれ出てくると、熱々の内に頬張る美紀。


「あらあら、熱かねぇ。ふふ、そんな急がんでもなくなりゃせんよ、美紀」

「はふっ、ほひしいよ…!」


白米と一緒に食べる美紀は、ニコッと笑った。