愛しのオオカミ

ご飯を食べ終えた美紀は、使った茶碗と弁当箱を洗い、お風呂に入ってから部屋に戻った。


「…ふぅ…」


ボスっとベッドに横になると、一息つく。
天井を見上げた美紀は、ゴロッと寝返りを打った。


(今日も疲れた……黒井くんも怖いし……でも…)


電車で支えてくれていたことを思い出す。


「…良い人…なのかな…?」


呟いた疑問は、部屋に小さく響いた。
今度は反対に寝返りを打つと、寝転がったまま、バッグから本を取り出した。

ページを開くと、そのまま読書にふける美紀。
気づけば日付を跨ぎそうだった。


(…読み終わっちゃった…また図書室行こうっと)


閉じた本を優しく撫でると、ふふっと微笑んでバッグに入れた。
ベッドの上で体を伸ばし、電気を消してそのまま眠る。





『だぁれ?』


知らない女の子が不思議そうに、美紀へ尋ねてきた。
体がふわふわするのを感じながら、女の子をただ見つめる美紀。


『あなた、だぁれ?』



ハッと目を開けると、カーテンから日差しが差し込んでいた。
目を擦りながら起き上がると、アラームの鳴るスマホを止めた。


(……?)


ぼんやりとしていた美紀は、欠伸をしながらベッドを降りて着替え始める。
改めて眩しい日差しを見ると、カーテンを少し開けた。


「……夢…?」


なんとなく、思い出せるような思い出せないことを考え、バッグを持って部屋を後にした。










「美紀ー!」

二限目前の休み時間、莉奈が手招きで呼ぶ。
慌てて教室の出入り口に駆け寄った。


「どうしたの…!?」

「ごめーん、古典の資料集貸してっ」

「MINEで言ってくれれば…!」

「朝送ったよ?返事ないから…」


自分の席に戻り、古典の資料集を取り出した。
振り向いた瞬間に、亮太とぶつかる。


「んっ」

「お、わっ。押花ちゃん、ごめん」

「ううん、私こそ…あ、ちょっとごめんね…!」


予鈴が鳴り始めた途端、亮太を通り過ぎ、莉奈に資料集を渡した。


「また昼休みにね!」

「うん」


間に合いそうなことに安堵しつつ、自分の席に戻ろうと振り返ると、クラスの大半がその様子を凝視し、視線を集めていることに気づいた。

視線を泳がせながら、席に着いた美紀は、スマホをとって机で隠して操作する。
MINEを開き、莉奈のトーク画面を開いた。


「さっきの見られてたから、お昼休みは別で。食べたら図書室にいるね」


すぐに既読が付くと、スタンプが送られてきた。
そして、スマホを机の中に入れ、入ってきた教員へ授業前の挨拶をした。