愛しのオオカミ


(ついてきたって思われてるよね…!?キモいとか思われてるよね…)


ひとり落ち込んでいたところで、電車がガタンッと大きく揺れた。


「…!?」

「………」


美紀の体もグラッと揺れたが、修が美紀の腕を支えた。
ズレかけた眼鏡で修を見上げると、変わらない鋭い眼差しを受ける。


「…ご、ごめんなさい…っ、……ありがとう…」

「……」


フイッと顔を逸らすが、美紀の腕から手を離さず、黙って支え続けた。
緊張感にギュッと目を閉じるものの、耐えきれずに口を開いた美紀。


「く、黒井くんも、同じ電車なんだね…」

「……」

「えっと、もう帰ったと思ってたから、びっくりした…あはは…」

「……」


眼鏡をかけ直しながら、一方的な会話になってしまうことに、泣きそうになる。


(…早く降りたい…!)


最寄り駅名が表示されると、安堵するようなしないような気持ちになった。


「あ………と、今日の案内以外でわからない場所があったら、私でよければ案内」

「押花」


美紀を見ないまま名前を呼ぶ修を、勢いよく見上げた。


「もっと気をつけろ。もっと頼れ」

「……えっ、あ…うん…そう…だね…?」


修も美紀をじっと見つめていると、乗降口のドアが開いた。
美紀から手を離し、また顔を上げる。


「早くしないとドア閉まるぞ」

「あっ、うん!また明日…!」


指摘されるまま慌てて降りると、ちょうどドアが閉まった。
振り返ると同時に、動き出す電車の窓から修の眼差しを受け取る。


「……なんで…降りる駅知ってるの…?」


流れていく電車を見つめて、美紀はぽつりとこぼした。




家の前で眼鏡ケースを出して、伊達メガネを入れると、バッグに押し込む。
玄関のドアを開けて、帰宅の挨拶を口にする。


「おばあちゃん、ただいま」

「…おかえりぃ。今日は遅かったねぇ」

「うん。あのね、転校生が来てね、学校の案内してたの」

「そうかい。手ぇ洗っておいで。ご飯できてるから」


おばあちゃんに返事を返すと、一度自分の部屋に戻った。
着替えを済ませ、バッグからランチバッグを取り出す。

洗面所へ向かい、手を洗ってから三つ編みを解いた。
ふと、鏡に映る自分を見て頬をつねった。


(……痛い…)


まるで現実を確認するように、当たり前のことを感じた。

台所にいくと、すでにご飯やおかずが並べられている。
流しにお弁当箱を置くと、椅子に座った。


「いただきます」

「はぁい。食べぇ」

「おばあちゃん、今日のおかずの唐揚げ美味しかった」

「美紀は唐揚げ好きやもんねぇ。味は大丈夫やったかい?」

「うん。さすがおばあちゃんだって思ったよ」


美紀は嬉しそうにニコッと笑った。