昔々、赤ずきんは、おばあさんの家に向かって歩いていた。
途中、猟銃を持った猟師と出会うと、「オオカミがうろついているから、寄り道をせずに行くように」と教えられた。
しかし、赤ずきんは道を外れて、花を摘んだ。
おばあさんへ届けようと、楽しく花を摘んでいる赤ずきんを、木の影からオオカミが見つめていた。
鼻歌を歌いながら、花を摘む赤ずきんの美しさに、オオカミは心を奪われたのだ。
オオカミは先回りをして、おばあさんをひと飲みにしてしまう。
急いでおばあさんの格好をすると、ベッドに横になって赤ずきんを待った。
おばあさんの家についた赤ずきんは、摘んできた花を花瓶に挿す。
オオカミは、丁寧な手つきで花を触る赤ずきんに見惚れた。
そして、赤ずきんは何度も何度も質問をしてくる。
赤ずきんの声を聞けば聞くほど、自分だけのものにしようと思ってしまう。
「おばあさん――」
最後の質問に答える前に、オオカミは我慢できずに、とうとう赤ずきんをひと飲みしてしまったのだ。
おばあさんの家から出てきたオオカミは、猟師と鉢合うと、すぐに逃げ出した。
しかし、お腹の中にいるおばあさんと赤ずきんの重さから、走ることができない。
猟師はオオカミを撃つと、すぐにお腹を開いて赤ずきんたちを救い出したのだった。
しかし、すべてを見ていた神様は悲しみ、怒った。
赤ずきん・猟師・オオカミへの戒めとして、各々の一族へ罰を与えたのだ。
偽物を信じた赤ずきんには「疑い」を
命を奪った猟師には「尊さ」を
欲のために食べたオオカミには「喪失」を
神様は、最後に言った。
『願わねば叶わぬ。成すべきことを成したとき、罰は許される』
人の世界へ戻った各一族は、この罰を受けた始まりの先祖を呪った。
赤ずきんの一族は、誰よりも物事を、人を疑い、信じることができない。
猟師の一族は、誰よりも短命であり、20歳に満たない若さで亡くなった。
オオカミの一族は、愛しい人を前にしなければ、欲に呑まれて忘れてしまう。
子孫たちは嘆いた。
なぜ、どうして、『自分たちが』…と。
苦悩と苦渋を抱えたまま、現代まで各一族は生きていた。



