「なんで? 俺と瑠華は大人になってもずっと一緒だよ。瑠華は俺の『特別』なんだから、結婚するに決まってんじゃん。」
一瞬の静寂の後、教室中が
「お前ら結婚だってよー!」
と大騒ぎになり、私は恥ずかしさの限界に達して幸平の背中をポカポカと拳で叩いた。
「もう! 幸平のバカ! なんでそんなこと言うのバカ!」
「たたた、痛いって瑠華! なんで怒るのさ! 本当のことじゃん!」
幸平は痛そうに身をよじりながらも、どこか嬉しそうに声をあげて笑っていた。
その真っ直ぐで透き通った瞳に見つめられた瞬間、私の胸の奥で、小さな鍵がカチリと音を立てて回ったのを覚えている。
ただの''お隣さん''で、当たり前のように隣にいる空気のような存在。
だけどその日から、幸平は私にとって、世界で一番大切で特別な『大好きな男の子』になった。
だけど、永遠に続くのだと信じて疑わなかったその穏やかな毎日は、小学4年生の夏、あまりにもあっけなく終わりを迎えた。
お父さんの急な海外赴任とそれに伴う転勤が決まり、遠く離れた街へ引っ越すことが決まったのだ。


