世界で1番近い君と、1番遠い初恋


​「……瑠華。おはよう」

​「……うん、幸平。おはよう!」


​9年ぶりに、何の嘘も隠し事もない、まっすぐな挨拶が交わされる。

2人並んで歩き出す通学路。

舞い散る桜の花びらの中で、隣を歩く幸平の体温が、こんなにも近くにあることが夢のようだった。

​放課後。

私たちはどちらからともなく、あの近所の公園へと向かった。

​ジャングルジムの前に立ち、私は鞄の奥から一つの小さな紙袋を取り出した。


​「これ……ずっと渡せなかったやつ。去年の幸平の誕生日に、本当は渡したかったの」


​幸平は目を見開き、そっと紙袋を受け取った。

中から出てきたのは、落ち着いた青色のイニシャル入りハンカチ。


​「あの時……私、彼女とお揃いのリングを見て怖くなっちゃって、渡せなかったの。でも、ずっと幸平のことを想いながら選んだんだよ」


​幸平はハンカチを愛おしそうに撫で、胸にぎゅっと抱きしめた。

その瞳に、うっすらと涙が浮かんでいる。


​「ありがとう、瑠華……。宝物にする」


​幸平はそう言うと、制服のポケットから小さな透明な箱を取り出した。

その中に入っていたのは────