世界で1番近い君と、1番遠い初恋


けれど、幸平の席は空っぽだった。

クラスの女子に尋ねると、
「神楽くん? 4時間目の途中で体調悪いって言って、カバン持ってそのまま早退しちゃったよ」
という答えが返ってきた。

​その直後、まるで私の胸のざわめきに呼応するかのように、灰色に濁った冬の空から冷たい雨が激しく降り始めた。

風を伴った大粒の雨が、校舎の窓ガラスをけたたましく打ち鳴らす。


​(どこに行ったの……? 幸平……)


​秋の数ヶ月間、徹底的に顔を合わせないように逃げていた自分を激しく後悔した。

幸平は家に帰っていない。

直感がそう告げていた。

私を避けて、自分を責めて、一人で誰にも見られない場所で壊れそうな心を抱えてどこかに逃げ出しているに違いない。

​私は傘も持たずに校門を飛び出していた。

​激しい雨が容赦なく全身を叩きつける。

制服も髪も瞬く間に濡れ鼠になり、氷のような寒さが皮膚を刺した。

けれど、そんな痛みを気にする余裕なんてなかった。

​濡れた足で無我夢中に街を走りながら、頭の中でひとつの場所が浮かんでいた。