世界で1番近い君と、1番遠い初恋


そこにあったのは、喜びなどではない。

凄まじいまでの『罪悪感』と『自己嫌悪』だった。

​自分が寂しさに負けて彼女を乗り換え続けている間に、瑠華はあの日の約束を一人で守り続けていた。

その残酷な事実が、真夏の光の中で幸平の胸を削ぎ落としていたのだ。


​「……聞かないでよ、幸平。私から離れて」


​私は耐えかねて背を向けた。

これ以上、幸平の苦しそうな顔を見ていたら、感情が決壊してしまう。

幸平はそれ以上私を追ってくることはなく、背後で荒い息を吐きながら立ち尽くしていた。


​そうして始まった夏休みは、私にとって人生で最も息苦しい40日間となった。

​学校という共有の場所がなくなったのに、隣同士という私たちの家柄は逃げ場を与えてくれない。

自室の窓を開ければ、目と鼻の先に幸平の部屋の窓がある。

カーテン越しに人影が見えるたび、胸が痛むようにぎゅっと締め付けられた。

​昔なら、夏休みになれば毎日のように
「海に行こう」
「花火しよう」
とベランダ越しに声を掛け合い、朝から晩まで一緒に過ごしていたはずだった。

けれど今の私たちは、近所の道で偶然出くわしても、お互いに浅い会釈をするのが限界だった。