世界で1番近い君と、1番遠い初恋



​けれど、5月12日────
私の16歳の誕生日当日。

朝、学校の下駄箱を開けると、1枚の小さなカードと小さな包みが落ちてきた。

​送り主の名前はない。

けれど、昔から変わらない癖のある乱雑な文字を見た瞬間、胸が大きく跳ね上がった。


​『瑠華、誕生日おめでとう。16歳だな。……これ、あげる。幸平』


​胸を躍らせて包みを開けると、中から出てきたのはシンプルな星のモチーフがついた華奢なシルバーブレスレットだった。

あの4年生の夏の日にくれた、ガラスのキーホルダーと同じ''星''の形。


​(幸平……覚えててくれたんだ。星のこと、私たちの約束のこと……)


​私はそのブレスレットを両手で包み込み、泣きそうになりながら胸に抱きしめた。

だけど、私の密やかな喜びは、その日の放課後あっけなく砕け散ることになる。


​「ねえ神楽くん、15日の誕生日どうするの? どこか遊びに行く?」

「あー、彼女がさ、放課後お祝いしてくれるって言ってたから、そっち優先かな」


​靴箱前で女子生徒たちと楽しそうに話す幸平の声が聞こえてきた。


​「いいなぁ、彼女さん! 幸平くん、誕生日プレゼントは何買ってもらうの?」

「ペアのリングが欲しいって言われててさ。休みに一緒に見に行く約束してんだよね」


​幸平の口から軽やかに語られる、彼女との誕生日の予定。

私がもらった星のブレスレットは、幸平にとって''昔の幼なじみへの義務的な義理プレゼント''に過ぎなかったのだと突きつけられた気がした。

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