周りが勝手に貼り付けたそんなレッテルを、私は否定も肯定もしない。
断る理由は、ただひとつしかないからだ。
誰の告白も受ける気になれないのは、私の心の中に、最初から────
そして今でも、ひとりの男の子しか入る隙間がないからだ。
「あ、見て……神楽くんだ。」
友人が小さく声を漏らし、視線を廊下の向こうへと向けた。
その名を聞いた瞬間、私の心臓が、跳ねるような痛みを伴って大きく跳ね上がる。
渡り廊下の向こう側から、数人の女子を連れて歩いてくる男の子の姿が見えた。
整った目鼻立ちに、柔らかく跳ねた髪。誰にでも親しみやすく笑いかける、眩しいほどの存在感。
神楽 幸平(かぐら こうへい)
『学年一のモテ男』
『圧倒的なビジュアルと優しさを持ち、いつでも彼女が途切れない男』
幸平のすぐ隣には、私の知らない可愛い女の子が寄り添うように歩いていた。
彼女は誇らしげに幸平の制服の袖をつまみ、幸平はそんな彼女の頭を、愛おしそうに撫でている。
「やっぱりお似合いだよねぇ、あの二人。神楽くん、先月前の彼女と別れたばっかりなのに、もう新しい彼女できてるし。」
「…あ、そういえば瑠華ちゃんと神楽くんって、幼なじみなんだよね? 小学校のとき一緒だったって。」
友人の軽い問いかけが、胸の奥を刺す。
「……うん。家が隣同士で、幼なじみだったよ。」
それだけを答えるのが精一杯だった。


