ドクン、と心臓が嫌な音を立てた。
目の前が大きく歪む。
あの優しく撫でられている手は、かつて泣きじゃくる私の手を強く握りしめてくれた手だ。
あの甘い笑顔は、私だけに向けられていたはずの笑顔だ。
幸平は、私を待っていなかった。
私が一人で告白を断り続け、誰とも付き合わず、幸平だけを想って過ごしてきたあの9年間。
幸平は他の女の子と恋をして、笑って、手を繋いで、彼女を乗り換えていたのだ。
(なんで……? どうして……っ)
その時、人混みの向こうで、ふっと幸平の視線がこちらに向いた。
視線が交差する。
幸平の瞳が大きく見開かれた。
彼の手がピタリと止まり、顔から一瞬で血の気が失われていくのが見えた。


