春の終わりを告げる風が、高校の渡り廊下に吹き抜けていた。
「ねえ瑠華、放課後カフェ寄っていかない? 新しく出来たお店、イチゴのパフェがすごく美味しいんだって!」
「あ、ごめんね。今日は図書委員の集まりがあるの。また今度誘って!」
隣を歩く友人・早紀(さき)に小さく笑いかけると、
「瑠華ちゃんは相変わらず忙しいねぇ」
と苦笑いが返ってきた。
橘 瑠華(たちばな るか)
それが今の私の名前だ。
入学してわずか数ヶ月。
この高校で私の名前は、勝手にひとり歩きしているらしい。
『他学年の男子や先輩からの告白を、すべて笑顔で断る高嶺の花』
『顔はアイドル並みなのに、誰にもなびかないガードの堅い転校生』


