世界で1番近い君と、1番遠い初恋


​自分の部屋で一人きりになると、まるで深海に沈められたような恐ろしい静寂が押し寄せてきた。

胸の真ん中にドリルでくり抜かれたような巨大な穴が開き、そこから絶え間なく冷たい冬の風が吹き抜けていく。

孤独で、寂しくて、暗闇の中で押し潰されそうで、息の吸い方が分からなくなるほどの恐怖。


​(瑠華……どこにいるの。帰ってきてよ。俺を一人にしないで……。)


​最初は電話で話すことができた。

受話器越しに聞こえる瑠華の声を聞いている時間だけが、俺が息を吸える唯一の瞬間だった。


けれど、中学にあがると互いの生活が忙しくなり、電話の頻度は少しずつ減っていった。

たまに交わす短文のメール。

文字だけのやり取りになるたび、受話器の向こうにいたはずの瑠華の存在が、手からすり抜けて遠くへ消えていってしまうような錯覚に襲われた。


​このまま瑠華は、向こうの街で俺のことなんて忘れていくんじゃないか。
俺の知らない男と仲良くなって、誰かを好きになってしまうんじゃないか。

​一度その恐怖が頭をよぎると、夜も眠れなくなった。