『もう、好きじゃないことにした』

「でもさ」

「ん?」

「でも、俺に言ってほしい」

「どうして?」

「莉央が一人で悩んでるの、もう見たくないから」

莉央は少しだけ目を伏せた。

「……じゃあ、次から言う」

「うん」

「……でも」

「ん?」

「今日みたいなのは、嫌だからね」

「今日みたいなの?」

「女の人と楽しそうに話してるの」

蓮は一瞬きょとんとして、それから口元を緩めた。

「……まだ気にしてたの?」

「だって……」

莉央は少しむっとしたように唇を尖らせる。

「蓮、楽しそうだったから」

「普通に仕事の話してただけだよ?」

「わかってる」

「じゃあ?」

「わかってるけど、嫌だったの!」

その言い方があまりにも素直で、
蓮は思わず笑ってしまう。

「……なに?」

「いや」

「笑わないで」

「ごめん」

そう言いながらも、蓮の顔は嬉しそうだった。

「莉央って、嫉妬するとこんな感じなんだ」

「……どんな感じ?」

「可愛い」

「……もういい」

莉央が拗ねたように顔を背ける。

「ごめんって」

「絶対思ってない」

「思ってるよ」

蓮は笑いながら、莉央の頬を軽くつついた。

「でも、もっと言って」

「何を?」

「嫉妬したこと」

「……嫌」

「なんで?」

「恥ずかしいから」

「俺は嬉しいけど」

「蓮だけでしょ」

「うん。俺だけでいい」

そう言って、蓮は莉央の手を握り直した。

「だから、これからもちゃんと言って」

「……わかった」

「約束」

「うん」

「じゃあ最後にもう一回だけ」

「なに?」

「今日、嫉妬した?」

莉央はしばらく黙ってから、
小さな声で答えた。

「……した」

「うん」

「結構した」

その言葉に、蓮の顔が緩む。

「……それは嬉しい」

「もう言わない」

「なんで?」

「蓮が嬉しそうだから」

「それは莉央が可愛いからでしょ」

「……知らない」

莉央は照れ隠しみたいに、蓮の腕に顔を埋めた。

蓮はそんな莉央を見て、
また嬉しそうに笑った。

「……ほんと可愛い」

「聞こえてる」

「聞こえるように言ってる」

「もう……」

莉央が顔を上げると、
蓮と目が合った。