『もう、好きじゃないことにした』


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しばらくして。

目が覚めた。

「……ん」

「起きた?」

「……蓮?」

「うん」

「ずっといたの?」

「いたよ」

「寝てないの?」

「ちょっと寝た」

「……そっか」

ぼんやり蓮を見る。

「喉、まだ痛い?」

「うん」

「水飲む?」

「飲みたい」

「はい」

蓮が身体を起こして、ペットボトルを渡す。

少し飲む。

「ありがとう」

「うん」

「……蓮?」

「ん?」

「なんか……機嫌悪い?」

「別に」

「……?」

蓮は目を逸らした。

「本当に?」

「本当」

「……嘘ついてる」

「……」

少し笑って
「何かあった?」と聞く。

蓮はしばらく黙っていた。

そして、

「……さっき寝言言ってた」

「え?」

「悠真って」

「…………」

莉央が固まる。

「え?」

「悠真って言ってた」

「……うそ」

「本当」

莉央は顔を真っ赤にした。

「……ごめん」

「何で謝るの」

「いや……」

「夢見てたの?」

「……たぶん」

「どんな夢?」

「分かんない……」

蓮は少しだけ口を尖らせた。

「元彼の夢?」

「知らないよ……」

「……」

「本当に覚えてない」

蓮は黙る。


私は思わず苦笑した。

「……もしかして、嫉妬してる?」

「してない」

「してる」

「してない」

「してる顔」

「……」

蓮は観念したようにため息をついた。

「……してる」

「ふふ」

「笑わないで」

「ごめん」

「だって」

蓮と目が合う。

「せっかく復縁できたのに」

「……」

「俺の隣で寝言で、元彼の名前呼ばれたら……そりゃ嫌だろ」

私は少し黙り込んだ。

そして、蓮の手を握る。

「……ごめんね」

「だから謝らなくていいって」

「でも……」

「寝言なんだから」

「……うん」

蓮は私の手を握り返した。

「俺も分かってる」

「……」

「ただ、ちょっとだけ嫌だった」

「……ちょっと?」

「かなり」

「ふふ」

「だから笑うなって」

私は笑いながら、蓮の手を頬に当てた。

「……私もね」

「ん?」

「前から、ちょっと気になってたことがあるの」

「何?」

「蓮が、美玲さんのこと呼び捨てにしてたこと……」

蓮が少し目を丸くする。

「……それ?」

「うん」

「気にしてたの?」

「……うん」

「言ってくれればよかったのに」

「だって……」

私は少しだけ目を伏せた。

「私もちゃんと嫌だったって伝えられてなかったから」

「……」

「だから、言えなかった」

蓮はしばらく黙ってから、私の髪を撫でる。

「……そっか」

「うん」

「でも、もう気にしなくていいよ」


「……?」
 
  . .
「本田さんとはあれ以降会ってないし、連絡先はもう削除した。
なによりも…俺が今好きなのは、莉央だけだから」

「……うん」

その言葉が嬉しくて、私は小さく笑った。

「私は今、蓮が好きだよ」

蓮が黙る。

「……今?」

「うん」

「じゃあ昔は?」

「昔も好き」

「……」

「でも、今はもっと好き」

蓮の顔が少し緩む。

「……それなら許す」

「ありがとう」

「でも」

「ん?」

「もう一回寝言であいつの名前呼んだら、たぶん拗ねる」

「ふふ」

「本気だから」

「分かった」

私は目を閉じた。

「じゃあ、寝るね」

「うん」

「蓮」

「ん?」

「そばにいてね」

蓮は一瞬で表情を柔らかくした。

「いるよ」

「ずっと?」

「うん」

「……ありがとう」

私は安心して、もう一度目を閉じた。