『もう、好きじゃないことにした』

その日の帰り道。

二人は並んで歩いた。

以前のように手を繋ぐ。

けれど、今までとは少し違った。

蓮は、繋いだ手に少しだけ力を込めた。

私も握り返す。

「ねえ、蓮」

「ん?」

「私ね」

「うん」

「ずっと、蓮に選んでもらわなきゃって思ってた」

蓮が私を見る。

「私より美玲さんのほうがいいんじゃないかとか」

「……」

「私じゃ蓮を幸せにできないんじゃないかとか」

少し笑った。

「でも、違った」

「……何が?」

「私も、蓮を選んでいいんだよね」

蓮は立ち止まった。

そして私の手を握ったまま、優しく笑った。

「当たり前だよ」

「……そっか」

「俺も莉央を選ぶ」

「うん」

「何回でも」

思わず笑みが溢れる。

「じゃあ私も」

「うん?」

「何回でも、蓮を選ぶ」



二人はもう一度、手を繋いだ。

今度は、どちらも離さなかった。

三年間。

好きなのに言えなくて。

大切なのに離れて。

信じたいのに怖くて。

何度もすれ違った。

それでも最後に二人を結びつけたのは、

「待っていること」ではなく、

「それでも、あなたを選びたい」

という、お互いの気持ちだった。

そして蓮はもう、莉央を待つだけの人ではない。

莉央ももう、自分を卑下して身を引く人ではない。

怖くなったら、ちゃんと話す。

寂しかったら、ちゃんと伝える。

そして、離れそうになったら――
今度は二人で、手を繋ぎ直す。

「莉央」

「ん?」

「好きだよ」

「……私も」

「大好き」

「……私も大好き」

二人は顔を見合わせて笑った。

繋いだ手に、もう一度力を込める。

「莉央」

「ん?」

「もう、好きじゃないことにしなくていいからずっとそばにいてね?」

莉央は一瞬目を丸くして、それから小さく笑った。

「……うん!」

今度こそ。

二人は、同じ方向を向いていた。

END♡