『もう、好きじゃないことにした』



二人きりになった。

私は泣きながら言った。

「……ごめん」

「なんで謝るの?」

「私、また蓮から逃げようとした」

「うん」

「……また、美玲さんの言葉を信じようとした」

蓮は首を振った。

「…美玲に今まで会ってたの?」

「……うん」

「俺に話してくれればよかったのに」

「でも……」

蓮が私の前に立つ。

「莉央」

「……」

「俺はもう、待つだけにしない」

蓮の顔を見上げる。

「ちゃんと追いかける」

「……」

「莉央が怖いって言ったら、ちゃんと聞く」

「……」

「離れたいって言われても、その理由を聞く」

「……」

「それでも莉央が俺を嫌になったなら、そのときはちゃんと受け止める」

蓮の声が震えた。

「でも、何も言わずに消えるのだけはやめて」

目から、また涙が落ちた。

「……蓮」

「俺、あの電話のあと、本当に後悔した」

「……」

「最初に待つって言ったこと。」

「……」

「莉央が戻ってくるのを待ってればいいって思ってた」

蓮は苦しそうに笑った。

「でも、莉央はずっと追いかけてほしかったんだよな」

泣きながら頷いた。

「……うん」

「ごめん」

「……私も、ごめん、蓮は待つだけじゃなくて、ちゃんと向き合おうとしてくれてたのに…。
本当は……ずっと会いたかった」

「俺も」

「蓮のことずっと好きだった…今も」

蓮の目が潤む。

「……俺も、ずっと好き」

私は唇を噛む。

「でも、ね、」

「うん」

「また、怖くなって離れようってなるかもしれない」

「うん」

「それでも……いい?」


ゆっくり手を伸ばし
蓮の服の袖を、ぎゅっと掴む。

「……蓮のそばにいたい」

蓮が、息を呑んだ。

驚いたように私を見つめる。

「……それって」
「…うん」

私は涙を流しながら笑う。

「もう一回、蓮と一緒にいたい」

その瞬間
蓮の目から、一筋の涙が落ちた。

「……いいの?」

「うん」

「本当に?」

「うん」

「後悔しない?」

莉央は少しだけ考えてから、首を横に振った。

「…もう離れない。」

そして。

「だって、蓮が大好きだから」

蓮が勢いよく私を抱きしめる。




今度は、私も逃げなかった。
 
「……会いたかった」

「私も……」

「ずっと会いたかった」

「……うん」

蓮は何度も私の髪を撫でる。

「もう離さない」

小さく笑う。

「……でも、また私が逃げたら?」

「追いかける」

「何回でも?」

「何回でも」

「……大変だよ」

「いいよ」

蓮は笑った。

「莉央のためなら」

私も泣きながら笑う。

「……ずるい」

「何が?」

「そんなこと言われたら、もう逃げられないじゃん」

「逃げてもいいよ」

「え?」

「逃げたら、俺が見つけるから」

蓮の胸に顔を埋めた。

「……じゃあ、もう少しだけここにいる」

「うん」

「もう少しだけ……」

「ずっといていいよ」


その言葉に、今度こそ私たちは笑いあった。