『もう、好きじゃないことにした』



「……元気だった?」

「……うん」

「そっか」

それだけ。

たったそれだけの会話なのに、
二人とも泣きそうだった。

莉央の顔を見つめる。

少し痩せた気がする。

髪も伸びている。

前より、少し大人っぽくなった。

それなのに――

(……可愛い)

思わず、そう思った。

一年経っても、やっぱり莉央だった。

「……仕事?」

「うん。ここで働いてる」

「そっか……」

「蓮は?」

「仕事でたまたま来て」

莉央は小さく頷いた。

偶然。

本当に偶然だった。

たまたまあったチェーン店のカフェ。
そういえば、莉央と付き合ってから新作のドリンクやスイーツが出たからって連れ回されて、美味しそうに頬張る莉央に癒されてたな。

そんな思い出に浸りながら入ってみた。

また会えたら…

心の中で何度も思った。

――神様なんて信じてなかったけど。

今日だけは、信じてもいいかもしれない。

「……会えてよかった」

その言葉に、莉央の目が潤む。

「……私も」

でも、莉央はすぐに視線を逸らした。

「……でも」

「うん」

「私、まだ……」

言葉が詰まる。

「まだ、ごめん。」

静かに頷いた。

「分かってる」

「また、蓮のこと好きになって……捨てられたらって思うと…」

「うん」

「だから……」

莉央は泣きそうになりながら笑った。

「前みたいには戻れないと思う」

「……そっか」

俺は、力なく笑った。



「…だけど、…前みたいに戻らなくていいよ」

莉央が顔を上げる。

「え?」

「前より、ちゃんとした関係になればいい」

「……」

「俺も変わるから」

まっすぐ莉央を見る。

「だから、今すぐ俺を信じなくていい」

「……蓮」

「時間かかってもいい」

「……」

「俺が追いかける」

莉央の目から涙が落ちた。




俺は小さく笑った。


「……今度は、追いかけてもう逃さないけど。」




蓮side end