『もう、好きじゃないことにした』

***

蓮side



翌朝。

莉央にメッセージを送った。

『昨日のこと、ちゃんと話したい』

既読はつかなかった。

昼になっても。

夜になっても。

次の日になっても。

既読はつかなかった。

電話をかけても繋がらない。

紗季ちゃんは莉央の居場所を頑なに教えてくれないし。 共通の友人に聞いても、誰も知らなかった。


そして一週間が過ぎた。

二週間。

一ヶ月。

莉央からの連絡は、一度もなかった。


でも──

ある夜。

ふと電話でのやり取りを思い出した。

『本当は、追いかけてほしかった』

あのときの莉央の言葉。

「……俺」

蓮は俯いた。

「何してたんだろ」

待つ。

それが莉央のためだと思っていた。

莉央が更に離れないように。

莉央が戻ってくるまで、何もせずに待つ。

それが優しさだと思っていた。

でも違った。

莉央はずっと、

「追いかけてほしい」

と言っていた。

「会いたい」

と言っていた。

それなのに自分は、

「待つから」

と言って、莉央を一人にした。

追いかけようとした時にはもう…遅かった。

「……待ってるだけじゃ」

声が震える。

「ダメだったんだ」

目から涙が落ちる。

「最初から俺が…行けば…よかった」

俺が莉央を追いかけると決めたときには、
…もう遅かった。

もっと早く、俺から追いかけていればよかった。

莉央が俺のことを信じられなくなる前に。
一人で離れることを決めてしまう前に。

最初から、俺が逃げずに追いかけていれば――。

莉央のところへ。

何度拒まれても。

何度「嫌だ」と言われても。

離れようとしている莉央を、何度でも追いかけて手を差し伸べればよかった。


「……ごめん」

誰もいない部屋で呟く。

「莉央……ごめん」

スマホを握りしめる。

もう一度だけ、電話をかける。

――繋がらない。

「……会いたい」

その言葉が、静かな部屋に落ちた。

そして俺は決めた。

もう、待たない。

諦めるわけじゃない。

莉央を探す。

どこにいるのか分からなくても。

何ヶ月かかっても。

何年かかっても。

今度は、自分から会いに行く。

「……俺が、莉央のところに行く」

そう呟いた。





このときの俺は、まだ知らなかった。






自分が諦めずに探し続けた先で――

もう二度と会えないと思っていた莉央と

再会をすることを。


蓮side end