『もう、好きじゃないことにした』

***


蓮side




俺は急いで美玲のところへ戻った。

「美玲」

「何?」

「さっき、俺と話してるとき」

「うん」

「莉央、見てなかった?」

美玲は少し考えるような顔をした。

「……どうだろう」

「ちゃんと答えて」

「蓮」

「頼む」

美玲は黙った。

そして。

「……角のところに、女の子がいた気はする」

全身から血の気がサーッと引いていく。

「……」

「莉央ちゃんだったのかもね」
美玲が微笑む。

「……」

俺はその場を飛び出した。

「蓮!」

振り返らない。

「……莉央」

頭の中が真っ白だった。

――見られた。

何を?

どこまで?


必死に思い出す。

美玲が俺に渡したのは、昔付き合っていた頃に貸していた服だった。

もう自分には必要ないもの。

俺は捨てていいと言った。

けれど、美玲は「じゃあ莉央ちゃんに渡しちゃお〜」なんて茶化して言っていたから、結局、俺の手元に戻ってきた。


そして。

美玲に聞かれた。

『昔は私のこと大事だった?』

だから答えた。

『大事だった』
『今は?』

あの質問に。

俺は

『今は莉央が一番大事、莉央の隣は一生俺がいい。』

と答えた。
美玲はそれを聞いても
腑に落ちてなさそうだったけど。


もし…

莉央がそこの会話を聞いていなかったとしたら…

「……最悪だ」

俺は急いで走った。

「なんで……」

自分はずっと。

莉央が怖がらないように待っていた。

追いかけないようにした。

連絡も控えた。

全部。

莉央を大切にするためだった。

なのに。

その結果。

莉央をまた傷つけた。

「……待つって言ったから」

目に涙が浮かぶ。

「俺から追わなかったのに……」

それが

…莉央に

『莉央のことをもう必要としてない』

そう見えてしまったのかもしれない。

何度も莉央にメッセージを送る。
だが、返事はない。

それでも、止まらなかった。

今さら何を言っても遅いのかもしれない。

それでも。

莉央を失いたくない。

この気持ちだけは、
どうしても諦められなかった。



蓮side end