***
四週間目。
俺は限界に近づいていた。
仕事にも集中できない。
食欲もない。
夜になると莉央のことばかり考える。
その日の仕事終わり。
『湊、今日飲みに行かないか?』
珍しく俺から誘った。
二つ返事で湊から返事が来た。
・
・
「……珍しいな。お前から誘うなんて、て言うかお前痩せたんじゃねーの?体調大丈夫かよ?」
「別にそんなことねーし、たまにはいいだろ」
そう言って向かったのは、
俺たちが昔からよく行く、いつもの居酒屋だった。
普段なら酒を飲むペースだって考える。
けれど今日は違った。
一杯、二杯と、いつもより明らかに早く酒が進む。
料理が運ばれてきても、ほとんど箸をつけないくせに、
酒だけは次々と飲んでいく。
「おい、ちょっと飲みすぎじゃね?」
「平気」
「いや、平気なやつはそんな飲み方しないって」
「……別に酔ってない」
そう言って笑った。
「その笑い方、いつもと違うぞ」
湊に指摘された。
確かに、頬は少し赤くなっていて、
目もどこかぼんやりするような。
そして何より。
さっきから何度もスマホを手に取っては、
同じ画面を眺めている。
湊に言われた。
「…もう一ヶ月だぞ」
「……うん」
「そろそろ会いに行ってもいいんじゃない?」
蓮は首を横に振った。
「ダメ」
「なんでそこまで意地張ってんの?」
「意地を張ってるんじゃなくて、俺が『待つ』って言ったから」
「でも、お前だって辛いだろ」
「辛いよ」
蓮は即答した。
「めちゃくちゃ辛い」
少し俯いて。
「でも、莉央はもっと怖いんだと思う」
「……」
「だから俺が無理やり引っ張ったら、また逃げる」
湊は何も言わなかった。
俺はグラスを傾けながら、ふっと笑った。
「……俺、弱いから」
普段なら、絶対に口にしない言葉だった。
けれど、今日は酒が入っているせいか。
胸の奥に押し込めていたものが、少しずつ緩んでいく。
「また莉央に逃げられるの、嫌なんだよ」
「……」
「本当は、行くなって言いたいし」
グラスをテーブルに置く。
「俺のこと好きなら、そばにいてって言いたい」
自分で口にして、苦笑した。
「……でも、そんなこと言ったら、莉央また困るだろ」
莉央が困った顔をするのが嫌だった。
自分のせいで、また莉央が苦しくなるのも嫌だった。
だからずっと、言えなかった。
「俺だって……離れたくないのに」
ぽつりとこぼれた声は、いつもの俺からは想像できないほど弱かった。
「会いたいし」
「声も聞きたいし」
「顔見たら、たぶん……帰したくなくなる」
酔っているからなのか、
それとも、もう隠していられなかっただけなのか。
自分でも分からない。
ただ、今だけは。
格好悪くてもいい。
余裕がなくてもいい。
「……本当は、今すぐ会いに行きたい」
そう呟いて、スマホを手に取る。
何度も迷った末に、そのまま莉央へ送った。
『本当は今すぐ会いに行きたい』
送信した瞬間、
蓮は深く息を吐いた。
「…はぁ…だいぶ酔ってるな、これ」
そう言いながらも、
送信を取り消す気にはなれなかった。
酔いが覚めても、
きっと同じことを思っている気がした。
蓮side end
四週間目。
俺は限界に近づいていた。
仕事にも集中できない。
食欲もない。
夜になると莉央のことばかり考える。
その日の仕事終わり。
『湊、今日飲みに行かないか?』
珍しく俺から誘った。
二つ返事で湊から返事が来た。
・
・
「……珍しいな。お前から誘うなんて、て言うかお前痩せたんじゃねーの?体調大丈夫かよ?」
「別にそんなことねーし、たまにはいいだろ」
そう言って向かったのは、
俺たちが昔からよく行く、いつもの居酒屋だった。
普段なら酒を飲むペースだって考える。
けれど今日は違った。
一杯、二杯と、いつもより明らかに早く酒が進む。
料理が運ばれてきても、ほとんど箸をつけないくせに、
酒だけは次々と飲んでいく。
「おい、ちょっと飲みすぎじゃね?」
「平気」
「いや、平気なやつはそんな飲み方しないって」
「……別に酔ってない」
そう言って笑った。
「その笑い方、いつもと違うぞ」
湊に指摘された。
確かに、頬は少し赤くなっていて、
目もどこかぼんやりするような。
そして何より。
さっきから何度もスマホを手に取っては、
同じ画面を眺めている。
湊に言われた。
「…もう一ヶ月だぞ」
「……うん」
「そろそろ会いに行ってもいいんじゃない?」
蓮は首を横に振った。
「ダメ」
「なんでそこまで意地張ってんの?」
「意地を張ってるんじゃなくて、俺が『待つ』って言ったから」
「でも、お前だって辛いだろ」
「辛いよ」
蓮は即答した。
「めちゃくちゃ辛い」
少し俯いて。
「でも、莉央はもっと怖いんだと思う」
「……」
「だから俺が無理やり引っ張ったら、また逃げる」
湊は何も言わなかった。
俺はグラスを傾けながら、ふっと笑った。
「……俺、弱いから」
普段なら、絶対に口にしない言葉だった。
けれど、今日は酒が入っているせいか。
胸の奥に押し込めていたものが、少しずつ緩んでいく。
「また莉央に逃げられるの、嫌なんだよ」
「……」
「本当は、行くなって言いたいし」
グラスをテーブルに置く。
「俺のこと好きなら、そばにいてって言いたい」
自分で口にして、苦笑した。
「……でも、そんなこと言ったら、莉央また困るだろ」
莉央が困った顔をするのが嫌だった。
自分のせいで、また莉央が苦しくなるのも嫌だった。
だからずっと、言えなかった。
「俺だって……離れたくないのに」
ぽつりとこぼれた声は、いつもの俺からは想像できないほど弱かった。
「会いたいし」
「声も聞きたいし」
「顔見たら、たぶん……帰したくなくなる」
酔っているからなのか、
それとも、もう隠していられなかっただけなのか。
自分でも分からない。
ただ、今だけは。
格好悪くてもいい。
余裕がなくてもいい。
「……本当は、今すぐ会いに行きたい」
そう呟いて、スマホを手に取る。
何度も迷った末に、そのまま莉央へ送った。
『本当は今すぐ会いに行きたい』
送信した瞬間、
蓮は深く息を吐いた。
「…はぁ…だいぶ酔ってるな、これ」
そう言いながらも、
送信を取り消す気にはなれなかった。
酔いが覚めても、
きっと同じことを思っている気がした。
蓮side end
