――それから、二人が同棲して1年たった現在。
***
その日は、朝から雨が降っていた。
窓の外を眺めながら、莉央は小さくため息をつく。
「雨かぁ……」
「嫌?」
後ろから聞こえた蓮の声に、莉央は振り返った。
「ううん。嫌じゃないよ」
「そっか」
いつも通りの声。
いつも通りの蓮。
……のはずなのに。
なぜか、今日は少しだけ違う気がした。
いつもなら起きてすぐ抱きしめてくれるのに、今日は「おはよう」と言っただけ。
朝ごはんを食べている間も、どこか上の空だった。
「蓮?」
「ん?」
「どうしたの?」
「何が?」
「なんか、今日変じゃない?」
そう聞くと、蓮は一瞬だけ目を逸らした。
「……別に」
その返事に、莉央は首を傾げた。
出かける時間になっても、やっぱり蓮は少しおかしかった。
「じゃあ、行ってくる」
「うん。いってらっしゃい」
いつもなら最後にキスをしてくれる。
けれど今日は、それもなかった。
ドアが閉まったあと、莉央は一人で立ち尽くす。
「……私、何かしたかな」
そんな不安を抱えたまま、仕事へ向かった。

