そんなある日。
バイト先の男の先輩から、突然声をかけられた。
「莉央ちゃん、今度二人でご飯行かない?」
「え?」
「この前話して、もっと話してみたいなって」
先輩とは普通に話す程度だった。
だから、少し驚いた。
「すみません。そういうのは……」
「そっか。ごめん、急に」
その場では、それで終わった。
けれど。
数日後。
バイト中、
女の先輩から突然声をかけられた。
「ねえ」
「……はい?」
「先輩に何言ったの?」
「え?」
「あの先輩。彼女いるって知ってるよね?」
頭が真っ白になった。
「……知りません」
「嘘つかないで」
「本当に知らなくて……」
先輩は、私を睨むように見つめた。
「私の友達と付き合ってるの知ってるでしょ?」
「……え?」
初めて聞いた。
どうやら、あの先輩には彼女がいたらしい。
しかも、その彼女はこの先輩の女友達だった。
「この前、話してたよね?」
「……はい」
「彼女いるって分かってて、なんで近づくの?」
「違います……!」
思わず声が大きくなる。
「私から話しかけたこと、一度もないです」
「でも、先輩と話してたよね?」
「……はい」
そこは否定できなかった。
私が見る限り、
あの先輩は私だけではなく、
他の女の子にもよく声をかけていた。
でも。
そんなことを、この先輩は知らない。
自分が紹介した友達と付き合っているから、
彼は一途なのだと思っているのだろう。
「……私、本当に何も知らなかったんです」
そう言っても、
先輩は納得してくれなかった。
「もう、先輩に近づかないで」
「……」
何も言い返せなかった。
私はただ、
知らないうちに誰かを傷つけていたような気がして、
「……すみません」
小さく頭を下げた。

