『もう、好きじゃないことにした』



ある日。



講義が終わって、
紗季と話していると。

少し離れたところに、
蓮がいた。

女の子と話している。

楽しそうに笑っている。

女の子も、
嬉しそうに蓮を見上げていた。

別に、珍しいことじゃない。

蓮は、そういう人だ。

女の子にモテるし、
誰とでも気さくに話す。

距離も近い。

それを知っているはずなのに。

なぜか、
胸の奥が少しざわついた。

「莉央?」

「……え?」

「どうしたの?」

「ううん。なんでもない」

慌てて視線を逸らす。

けれど、
気になってしまって、もう一度だけ蓮を見る。

ちょうどそのとき、
蓮がこちらに気づいた。

女の子に何か一言告げて、
そのままこっちへ歩いてくる。

「莉央」

「……ん?」

「帰る?」

「うん」

蓮は当たり前みたいに、
私の隣に並んだ。

「今日、なんか食べて帰る?」

「どうしようかな」

他愛のない話をしながら歩く。

さっきまで感じていたざわつきが、
少しずつ消えていく。

隣に蓮がいる。

それだけで、
さっきまで気になっていたことが
どうでもよくなっていく。

そのことに、
また戸惑った。








――なんでだろう。

蓮と一緒にいると、安心する。

もっと一緒にいたい。


そんな気持ちが、
少しずつ大きくなっていた。



それが何なのか、
このときの私はまだ知らなかった。