『もう、好きじゃないことにした』



家に帰ってからも、今日のことを少しだけ思い出していた。

神谷蓮。

噂では、女の子とよく一緒にいるチャラい人。

実際に話してみても、確かに距離の詰め方は早かった。

初対面なのに名前で呼んでって言うし。

でも。

嫌な人ではなかった。

むしろ、話しやすかった。

傘も自然に貸してくれて。

私が濡れていないか気にしてくれて。

「また」と言った時も、嬉しそうに笑っていた。

――いい人だったな。

そう思った。

ただ。

それだけだった。

この時の私はまだ、知らなかった。

この人と何度も会うことになることも。

少しずつ、この人のことを知っていくことも。

そしていつか。

「会いたい」と思うようになることも。