『もう、好きじゃないことにした』



「莉央ちゃんって、よく笑うね」

「蓮くんが変なこと言うからですよ」

「俺のせい?」

「たぶん」

「……声低くして…それ俺の真似?」

「ふふっ」

また笑った。

その笑顔を見て、俺も自然と笑っていた。

くだらない会話だった。

でも、不思議と楽しかった。

駅までの道が、思っていたよりずっと短く感じる。

「じゃあ、俺こっちだから」

「はい。今日はありがとうございました!」

「こちらこそ」

「傘、ありがとうございました」

「気にしなくていいよ」

「でも、助かりました!」

そう言って、彼女は笑った。

「じゃあ、また」

「……また」

その言葉を聞いて、なぜか嬉しくなった。

彼女が歩いていく。

俺も反対方向のホームへ歩き出す。

なのに。
少し歩いたところで、
なんとなく振り返った。

莉央も振り返っていた。

目が合うと、
彼女は小さく頭を下げる。

俺も軽く手を上げた。

もう一度振り返った。

……まだいる。

彼女は俺を見つけると、
またぺこっとお辞儀をした。

俺も笑って、軽く会釈を返す。

すると莉央は、
少し恥ずかしそうに笑った。

そのまま歩き出して、
しばらくしてから、また振り返る。

……律儀だな。

思わず笑ってしまう。

――もう少し、話していたかったな。

蓮side end