『もう、好きじゃないことにした』


彼女が振り返る。

「え?」

近くで見ると、やっぱり可愛い。

ぱっちりした目で俺を見上げて、少しだけ首を傾げる。

「傘、忘れちゃって」

「ああ、やっぱり」

「でも、もう少し待てば弱くなるかもしれないので」

そう言って、彼女は雨を見る。

「じゃあ、入る?」

「え?」

「俺の傘」

「でも、悪いですよ」

「駅までなら一緒でしょ」

「……そうですけど」

少し考えてから、彼女は申し訳なさそうに笑った。

「じゃあ、お言葉に甘えてもいいですか?」

「もちろん」

傘を開く。

彼女が隣に入ってくる。

「ありがとうございます」

「うん」

近い。

ふわっと、いい匂いがした。

――やっぱり、可愛い。

そんなことを考えながら、俺は自然と彼女の歩幅に合わせていた。