『もう、好きじゃないことにした』



――神谷蓮。

同じ大学に通う人なら、一度くらいは聞いたことがある名前だった。

顔がいい。

背が高い。

女の子にモテる。

そして何より――チャラい。

女の子と一緒にいるところをよく見かけるし、距離感近いし、誰にでも気さくに話しかける。

そんな噂を、私も何度か耳にしたことがあった。

だから、名前だけは知っていた。

でも。

まさか、自分がその人と話すことになるなんて思ってもいなかった───。





その日は、雨が降ったり止んだりしていた。

大学を出たときは、雨は降っていなかった。

けれど、駅へ向かって歩いている途中、
ぽつぽつと雨が降り始める。

「……あ」

空を見上げて、
そこでようやく気づいた。

傘を持ってくるのを忘れていた。

仕方なく、通り道にある公園まで小走りで向かい、屋根のあるベンチへ駆け込んだ。

ベンチに腰を下ろし、
雨が止むのを待つことにした。

どうしよう。

スマホを取り出して天気予報を見る。

雨雲は、まだしばらく居座るらしい。

もう少し待ってみようかな。

そう思っていると――。

「傘、ないの?」

突然、声をかけられた。

振り返る。

そこにいたのは――。

噂で聞いていた、神谷蓮だった。