『もう、好きじゃないことにした』

莉央は何も言わず、蓮を抱きしめ返した。

しばらくして。

蓮が顔を上げる。

「……コンビニ行ったの?」

「うん」

「一人で?」

「うん」

「何買ってきたの?」

「朝ごはん!
冷蔵庫に何も入ってなかったなって思って…」

「……俺のも?」

「もちろん」

蓮は一瞬黙った。

それから。

「……好き」

「え?」

「莉央、好き」

「急に?」

「今めちゃくちゃ好き」

「ふふ」

「笑わないで」

「だって……」

「もう一回言う」

「え?」

「莉央が好き」

「……うん」

「大好き」

「……私も」

「本当に?」

「本当」

「俺のこと置いていかない?」

その言葉に、莉央は蓮をまっすぐ見つめる。

「置いていかないよ」

「……約束?」

「約束」

蓮は安心したように笑った。

そしてまた莉央を抱きしめる。

「……よかった」

「蓮、今日すごい甘えんぼだね」

「今日だけじゃない」

「え?」

「前からずっと」

「そうだった?」

「莉央が気づいてなかっただけ」

そう言って、蓮は莉央の髪を撫でる。

「もうさ」

「ん?」

「朝起きて莉央がいないの、無理」

「……そんなに?」

「無理」

即答だった。

「トイレ行くときも言って」

「それはさすがに……笑」

「じゃあメモ置いて」

「そこまで?」

「『すぐ戻ります』って」

「ふふ、子どもみたい」

「いいよ。莉央がいなくなるよりマシ」

そう言って、また抱きしめる。

今度はさっきより優しく。

「……俺ね」

「うん」

「莉央が隣にいるの、未だにちょっと夢みたいなんだよ」

「……」

「だから、起きたときにいないと……一瞬、全部夢だったのかと思う」

莉央の胸がズキっと痛くなる。

「……ごめん」

「謝らないで、俺が悪いんだから」

「私、ここにいるよ」

「……うん」

「蓮の隣にいる」

蓮はその言葉を聞くと、ふっと表情を緩めた。

莉央の手を取る。

「じゃあ、ずっとここにいて」

「ずっと?」

「うん」

「仕事は?」

「仕事は…行ってきてください」

「ふふ」

「莉央俺のそばから離れないで」

そう言って、蓮は莉央の手の甲にキスを落とした。

「大好き」

「……私も大好き」

「もう一回」

「蓮、大好き」

「……もう一回」

「ふふ、何回言わせるの?」

「安心したいから」

莉央は笑って、蓮の胸に顔を埋めた。

「大好きだよ」

「……うん」

蓮は満足そうに莉央を抱きしめる。

「俺も、莉央が思ってるよりずっと好き」

「どのくらい?」

「……一生じゃ足りないくらい」

「大げさ」

「本気」

そして蓮は、もう一度莉央を抱きしめた。

今度は絶対に離さないみたいに。

――朝、目を覚ましたとき。

隣に莉央がいる。

ただそれだけのことが、蓮にとっては何より幸せだった。