孤高の大富豪は優しい魔女に恋をする

シアは帰りの車の中でもずっと競馬の話をしていた。

そしてプライベートジェットに乗ったとたん糸が切れたようにコトンと眠ってしまった。

昨日の夜疲れさせてしまったので、ダルはシアをインヴァネス空港に着くまで寝かせた。

空港からはダルが運転してシアの家まで送った。

本当はシアを自分の家に連れて帰りたかったが、マギーをまた一人にする訳にもいかずダルは残念な気持ちを隠してシアを帰した。

また八月のゴールドバラスのレースがちょうどマギーのサマーキャンプの日に当たるので、その日はロンドンで二泊できる事になった。

ロブはホースセンターのマイクが見てくれることになり、シアは安心してダルとまたロンドン旅行に出かけて行った。

二人の仲が深まっていくにつれシアの悩みも深刻になった。

シアは恋はしないつもりだったのにダルに恋してしまった。

自分ではダルへの想いをどうにもできなかったのだ。

結婚も子供を産むことも諦めていたのに、ダルを愛することでダルの子供が欲しいと思ってしまう。

そんな自分を持て余していた。

ダルがシアに愛を囁くのを嬉しいと思ってしまう。

ダルが側に居ると触れて欲しくて胸の奥がきゅんと痛くなるのだ。

ある日シアがお店の休みの日にダルの家に行くと、ダルは一階のデッキにシアを誘い花束と四角い小さなハイブランドのロゴがある箱を持ってシアの前に跪いた。

そして「シア、結婚して欲しい。シアの事を愛しているんだ。シアが俺の側に居てくれるそんな未来だけが俺の唯一欲しいものなんだ」

「ダル、私も愛しているわ。でも結婚できない。もう魔女は私で最後にしたいの。その所為で家族がつらい目に合うのは耐えられない」

「俺はシャドーになんか負けないよ。今スコットランドヤードの知り合いにも相談してるんだ。彼らはシャドーの存在を知っていたよ。彼らに協力してシャドーを倒そう」

「えっ、ダル本当に?シャドーを倒せるの?」

「そうだ、一緒に戦おう。絶対に一網打尽にしてみせるよ。ヤードの連中もやる気満々なんだ。水面下で動いてくれてるよ」

シアはダルの言葉を聞いて唖然とした。

シャドーを倒すことが本当にできるのだろうか?

両親はシャドーに見つかる前に逃げろと言って、シアとリリーを育てたのだ。

シャドーと戦うなんて思ってもみなかった。

ダルはシアの為に警察を動かしてくれているのだ。

シアだってもう逃げたくない。