孤高の大富豪は優しい魔女に恋をする

ダルはシアと出会えた事こそ運命だったのだと、そう確信した。

女性に一目で魅かれた事なんて初めてだったのだ。これを運命と言わずに何だと言うのだ。

ダルはそう確信したが、まだそれをシアに言うには早すぎる。

だからロブを見ながら優しい声で

「ロブとマギーはどんな風にやって来たんだ?」

「ウフフ、ロブは寒い雨の日びしょぬれで泥だらけで勝手口に寝そべってました」

ロブは自分の話をしているのが分かったのだろう”クウ~ン“と鳴いてシアの膝に顎を持たせかけて甘えた。

「ロブの事をダルにお話しているのよ」

そう言ってシアはロブの頭を撫でてやった。

「ロブ、びしょぬれで泥だらけだったのか?寒かっただろう」

ダルにも頭を撫でて貰ってご機嫌なロブだ。

「マギーはロブが見つけたんです。小雨の日でした。スーパーの角を回った所にマギーが蹲っていたんです。養護施設を飛び出してきたそうです。いじめられて辛い思いをしていたようです。それで私がすぐに里親になると言って施設に連絡をしたんです。マギーはその日から家にいます。ロブもマギーも私の所に来ることが決まっていたようです。そう思えてならないんです」

シアは遠くを見る目をして優しく微笑んだ。

その微笑みにダルは胸を突かれた。

優しくて温かく人を包み込むような慈愛に満ちた微笑だった。

後で思い返してみるとその時完全にシアに恋したのだと思う。

「シアは逃げてなんかいない前を向いて一生懸命に生きているじゃないか」

「そう言ってもらえてちょっと自信がつきました。今は二人と一匹でそれは楽しく快適に暮らしています。妹のリリーが来てくれれば完璧な四人家族です」

「そうか、妹さんはもうすぐ帰ってくるのか?」

「妹はホテルで働きたいんです。そのためにフランス語と韓国語をマスターしたようです。カナダで就職すると思っていたんですが、イギリスに帰って来るって言ってます。キャッスルホテルの写真を見て実際に見てみたいと言って今年のクリスマス休暇に家に来てくれるそうです。ホテルを見るのを楽しみにしているんです」

「じゃあ、滞在中にホテルを案内してレストランで食事をご馳走するよ」

「ええ~っ、そんなこと言ったらリリーは実現するまでダルに付きまといますよ。頑固で一途なんですから」

「あはは、きっとシアの妹さんなら美人だろ?美人に付きまとわれるなら本望だ」

ダルは大きな声で心から笑った。