孤高の大富豪は優しい魔女に恋をする

ダルはその様子を牧場の厩舎の方から見ていた。

やはり思った通り素晴らしい乗り手だった

来週には湖まで連れて行けそうだとスケジュールを確認する事と頭の中にメモをした。

いつのまにか隣にロナウドが立っていた。

「ダルが夢中になって何を見ているのかと思ったら、彼女がシアか?」

「別に夢中になってみていたわけではない。外乗が許可になったら湖まで案内すると約束したから確認していただけだ」

「障害も楽々と乗りこなしているじゃないか、素晴らしい乗り手だな。ここから見ても姿勢が綺麗でぶれない」

「そうだな、ちょっとびっくりしてる。彼女三年前までは馬を飼っていたそうだから当然と言えば当然だな。それより安眠効果のキャンドルはどうだ?」

ダルはこれ以上シアの話題で墓穴を掘るつもりはないので、話をうまく変えた。

「いやあ、それもびっくりだよ。キャンドルを焚いて十分と本なんか読んでいられないよ。この頃快調で寝室に入るとキャンドルの匂いがするから眠くなってしまうよ」

「あはは、それはすごいな。俺も時々焚いている。何か眠りの質が良くなった気がする」

「確かに、それにあの傷薬もすごいよ。ビンスが良く紙で指先を切ってしまうんだが、先週もまた切ったからあの傷薬を塗ってやったんだ。そしたら次の日にはもう跡形もなくなってた。いつもは傷テープを貼って三~四日しないと痛みが取れないらしい。びっくりしていたよ。子供のあせもや虫刺されにもいいらしいと言うと近いうちに買いに行くと言ってたなあ」

「そうか若いけれど結婚していて子供もいるんだったな」

「そうだな、俺達もそろそろ考えたほうが良いのかもな。やっと周りの事も落ち着いてきたし、財団もバッドリー夫人に任せて上手く回っているようだ。ケイパックのお金を必要な所にきちんと使っていくことが大切だからな。引退後の競走馬のセカンドキャリア支援や普及活動にも積極的に取り組んでいるよ」

「それは良かった。母が財団の理事長だったときは芸術や学生たちの交流プログラムに重きを置いていたからな。芸術も大事だが、馬の事も考えてもらえるのは嬉しいよ」

「競馬協会からの寄付も各競馬場の寄付も可視化して引退競走馬への貢献度を煽っている。うまいやり方だよ」

「うん、競走馬になって優勝を何回か経験して繁殖のセカンドキャリアに付ける馬はほんの一握りだからな。色々なセカンドキャリアを考えてくれるといいな」

「そうだな。まあバッドリー夫人に任せて置けば大丈夫だろう」

ダルとロナウドはこの後のオンライン会議に出なければならず、二人でダルの家まで歩いて行った。