肢体不自由特別支援学校の「重度」生徒のグループでの体験です。
4月下旬の離任式で、離任した先生たちに色紙を贈ることになりました。生徒たちは、経管栄養のチューブ等の医療器具をつけ、身体が拘縮・マヒしている状態です。色紙に直接書くのは難しいので、授業の時間に、大きな紙に離任した先生の人数分描いて、それを切り分けて色紙に貼る、という方法で行いました。
私は、車椅子に座った担当の生徒マサコさんと一緒に、別紙に糊を塗り、ピンクと黄色のお花紙をちぎり、丸めて貼りました。マサコさんはマヒはありますが、両手を動かすことが少しできました。私が紙の上に出した糊を、上から叩くようにして伸ばしました。お花紙をちぎるのも、紙に切れ目を入れれば少しできました。丸めるところは、私が紙を丸めて、それをマサコさんの手のひらに入れ、手伝いながら小さく丸めました。貼るのは難しいので、マサコさんに見せながら、私が行いました。授業が終わると、マサコさんの手は糊とお花紙でべたべたになっていました。
この「寄せ書き」制作で、私はナツエさんとユキオくんという、二人の生徒の補助に入りました。ナツエさんの制作ではベテランの林先生がメインでした。林先生はナツエさんに「指でスタンプ」という絵本を読み聞かせしたあと、絵本に出てきたいろいろな模様の中からナツエさんと一緒に、ハートの形を選びました。林先生は絵の具をパレットに出すと、ナツエさんの細い人差し指を持って、オレンジの絵の具にひたしました。そして、ナツエさんの指を持つと、紙の上にハートの形を「スタンプ」しました。離任した先生の人数分、オレンジ色の可愛いハートができあがりました。
ユキオくんの制作は、私の真似できないハイテク機器を駆使したものでした。担当の中島先生は、指で画面をなぞると絵が描けるタブレットを、ユキオくんの手元で支えるように私に言いました。中島先生は「こうするんだよ」等々話しかけながら、タブレットの画面に自分の指で描いてみせました。そのあと、ユキオくんの人差し指を持つと、ユキオくんの指で「ありがとう ゆきお」とタブレットの画面に書きました。画面にはきれいな色で、ユキオくんの指で描いた中島先生の筆跡が出てきました。その日の授業が終わると、中島先生はタブレットに保存したユキオくんの「文字」を、離任した先生の人数分カラー印刷しました。カラフルに刷り上った文字を手にとって、中島先生は「これ、ユキオくんの、すごいでしょ」と周囲の先生たちに得意げに見せ、賞賛の声を集めていました。
ナツエさんもユキオくんも、マサコさん同様、自分の力で手を動かすことができます。絵の具を指につければ、自分の力で紙に色をつけられるし、タブレットを手元にもっていけば、自分で手を動かして画面をさわることができます。「きれいにまとめる」ことは難しいですが、先生に指を持ってもらわなければ何もできないわけでは決してありません。
生徒が、手を汚しながら自分の力で対象に働きかけることと、大人に指を持ってもらいながら、きれいにまとまったものを仕上げることと、どちらを望んでいるかは、わかりません。ただ、「ハート」や「ありがとう」を、彼らの「制作」と言ってしまっていいものなのでしょうか。疑問が残るところです。
4月下旬の離任式で、離任した先生たちに色紙を贈ることになりました。生徒たちは、経管栄養のチューブ等の医療器具をつけ、身体が拘縮・マヒしている状態です。色紙に直接書くのは難しいので、授業の時間に、大きな紙に離任した先生の人数分描いて、それを切り分けて色紙に貼る、という方法で行いました。
私は、車椅子に座った担当の生徒マサコさんと一緒に、別紙に糊を塗り、ピンクと黄色のお花紙をちぎり、丸めて貼りました。マサコさんはマヒはありますが、両手を動かすことが少しできました。私が紙の上に出した糊を、上から叩くようにして伸ばしました。お花紙をちぎるのも、紙に切れ目を入れれば少しできました。丸めるところは、私が紙を丸めて、それをマサコさんの手のひらに入れ、手伝いながら小さく丸めました。貼るのは難しいので、マサコさんに見せながら、私が行いました。授業が終わると、マサコさんの手は糊とお花紙でべたべたになっていました。
この「寄せ書き」制作で、私はナツエさんとユキオくんという、二人の生徒の補助に入りました。ナツエさんの制作ではベテランの林先生がメインでした。林先生はナツエさんに「指でスタンプ」という絵本を読み聞かせしたあと、絵本に出てきたいろいろな模様の中からナツエさんと一緒に、ハートの形を選びました。林先生は絵の具をパレットに出すと、ナツエさんの細い人差し指を持って、オレンジの絵の具にひたしました。そして、ナツエさんの指を持つと、紙の上にハートの形を「スタンプ」しました。離任した先生の人数分、オレンジ色の可愛いハートができあがりました。
ユキオくんの制作は、私の真似できないハイテク機器を駆使したものでした。担当の中島先生は、指で画面をなぞると絵が描けるタブレットを、ユキオくんの手元で支えるように私に言いました。中島先生は「こうするんだよ」等々話しかけながら、タブレットの画面に自分の指で描いてみせました。そのあと、ユキオくんの人差し指を持つと、ユキオくんの指で「ありがとう ゆきお」とタブレットの画面に書きました。画面にはきれいな色で、ユキオくんの指で描いた中島先生の筆跡が出てきました。その日の授業が終わると、中島先生はタブレットに保存したユキオくんの「文字」を、離任した先生の人数分カラー印刷しました。カラフルに刷り上った文字を手にとって、中島先生は「これ、ユキオくんの、すごいでしょ」と周囲の先生たちに得意げに見せ、賞賛の声を集めていました。
ナツエさんもユキオくんも、マサコさん同様、自分の力で手を動かすことができます。絵の具を指につければ、自分の力で紙に色をつけられるし、タブレットを手元にもっていけば、自分で手を動かして画面をさわることができます。「きれいにまとめる」ことは難しいですが、先生に指を持ってもらわなければ何もできないわけでは決してありません。
生徒が、手を汚しながら自分の力で対象に働きかけることと、大人に指を持ってもらいながら、きれいにまとまったものを仕上げることと、どちらを望んでいるかは、わかりません。ただ、「ハート」や「ありがとう」を、彼らの「制作」と言ってしまっていいものなのでしょうか。疑問が残るところです。

