引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実は私がスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

 屋敷の灯りがたくさんついている本館を抜けて、隣にある別館へと歩いていく。

 勘当してもらってから、レナールが自分で荷物を動かし、ここの空いた部屋を自室にしてしまったらしい。

 それまでは来客の多い時にたまに使う程度だったそうだが、レナールの部屋ができたので、今は廊下に埃一つなく綺麗に掃除がされている。窓から差す月明かりの中を、ルイサに追いかけられながら、アレッシェラは廊下を歩いた。

「お、お待ちください、アレシナ様。夜に殿方の部屋を訪問されるなど、本気ですか!?」

「もちろんだ。もしうまくいけば、運命が私たちに味方をしたことになるし、不首尾ならば別の方法を考える」

「ですが……いくら、レナール様が縁談を拒んでいるとはいっても、相手は殿方ですよ!?」

 どんなことになるか――と、汗を掻きながら追いかけてくる。

「なったらなったで、それこそ間違いなく神が定めていた私の相手ということだ」

「お待ちください。そんな乱暴な見定め方!」

 私は、アレッシェラ様が不本意な目に遭われるのは嫌ですと、ふだんとは違う侍女が纏うようなドレスを翻しながら、慌ててルイサが後ろをついてくる。

 ルイサの心配性はいつものことだが、さすがに今回のことは、あまり時間をかけるわけにはいかない。

 それにと、廊下の奥に見えた光景に、アレッシェラはひそっと声を潜めた。

「その心配には、どうやら先客がいたみたいだぞ」

「え?」