引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実は私がスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

「ならば、行け。最早、これ以上の謝罪は無用だ」

 そっけなく言い放つと、ダリオ殿下は再度地面に額がつく勢いで頭を下げている。そして、何度もお礼を述べると、皇族とは思えない振る舞いを見せたのを取り繕う様子もなく、シモンヌに手を差しのべて下がっていく。

 その姿を見送り、アレッシェラも今来た道を戻った。

 火事の騒ぎはもうだいぶ収まり、庭にいた来館者たちも大半が帰ってしまったようだ。

(まあ、煙自体は、レナール様と引き離すための工作だったのだから)

 被害もほぼないだろう。

 だから、先ほどよりは随分と静かになった博物館の側を歩いていく。

 途中で、わらや生木や葉が灰になったものが遠くに見えた。おそらくあれで、煙を大量に出して、火事と誤解をさせたのだろう。

(人が少なくなった割に、まだどこかで騒がしい声がするな?)

 火事の心配もなくなり、来館者もほとんどが帰ったというのに――。なにか慌てているような声がする。

(まだなにかあるのだろうか?)

 だとしたら、レナールは、今どこにいるのか。捜すべきか、元のところで待つべきかと悩んだところで、突然走ってくる音がした。

 そして、ぐいっと腕を掴まれる。

「どこに行っていたのですか!? すごく捜したんですよ!?」

「えっ」

 驚いて見つめれば、それはまさに今脳裏に描いていたレナールではないか。

 焦った顔で汗を掻きながら、青紫の目は、必死で腕を掴んだアレッシェラの顔を見つめていた。