引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実は私がスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

 後ろに立っていた男を、ちらりと見て笑いながら呟く。その言葉にダリオが、慌てて膝立ちになった。

「お前! あれだけ呼び出しは丁重にと言ったのに!」

「え、こういう意味の丁重ではなかったんですか!?」

 頼まれた男は、着ている服を見ると、どうやら下町に住んでいる者のようだ。ダリオ殿下は、侍従も連れていなかったので、おそらく小金で雇っていたのだろう。

「その様子だと、滞在しているのはあまり治安のいいところではないみたいだな。私からもソ・レイジェラへ先ほどの言葉を伝えておくから、母子のために、もっと治安のいいところへ移ってやれ」

 ソ・レイジェラに伝えれば、瞬く間に各国の神殿へと伝わる。もう誰もダリオ殿下たちに危害を加えることはできないだろう。

「ありがとうございます、大聖女様……」

「シモンヌ……」

 はらはらと涙を流すシモンヌの肩を抱くダリオ殿下の顔は、すっかり一人前の男になっている。

(子供の存在が、ダリオ殿下を成長させたのだな……)

 今の姿なら、きっと子供と妻を命がけで守る立派な父親となるだろう。

 なにが人を変えるかはわからない。

 かけがえのない家族の絆――それを見た思いがして、アレッシェラの心に温かいものが満ちた。