引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実は私がスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

 その側で、貴族令嬢にしてはひどく質素な衣装を纏ったシモンヌが、身を起こした。

「いえ、すべて私が悪いのです! ダリオ殿下にとっては、あまたの女性の一人だと知っていたのに、少しでもお側にいたくて、夜も無理に引き留めてしまいました……! お願いです、悪いのは勝手にお慕いした私なのです! 一生子供の父親の名前は言えなくてもかまいません! だから、どうかこのおなかの子とダリオ殿下だけは、なにとぞお許しいただけないでしょうか」

 泣きながら、最後には深々と頭を下げている。

「シモンヌ……」

 腕を組みながら、アレッシェラはジッと二人の様子を眺めた。

 大聖女アレッシェラに不敬を働き、怒りを買ったとなれば、信仰の厚い帝国民と皇帝は決してこの二人を許しはしないだろう。

 ダリオ殿下は皇籍の剥奪と追放ぐらいですむかもしれないが、その原因となったシモンヌは、命ごと存在を消すことで、大聖女とソ・レイジェラへの詫びとされる可能性が高い。場合によっては、考えられる限りの残虐な処刑方法が採られるだろう。

 とはいえ、澄んだ涙を静かに流している彼女の言葉に嘘の気配はなく、ただ、子供と愛する人の命を救いたい――その強い願いだけが感じられる。

「シモンヌ! お前に罪はない。悪いのはすべて、こうなる可能性があると知りながらも、自制をしなかった俺なのだから――」

 だから、お前は絶対生きて子を育てろという二人様子を見つめ、アレッシェラは、ふうと軽く息をついた。

(どうやら、ダリオ殿下に、子供と母親の命を守るつもりはあるようだ――)