引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実は私がスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

「レナール様と二人きりになれないのなら、こんなところに用はないわ!」

 そのまま、ふんと背中を翻すと、遠くに見える馬車の停車場へと歩いていく。

「さて――」

 残されたアレッシェラが周囲を見渡せば、出てきた来館者たちは、みんな戸惑っているようだ。

「なにがあったのかしら?」

「さあ――。煙だったから、ひょっとして、厨房などで火の不始末があったのだろうか」

 ざわざわと声がする。突然のことに、みんな戸惑っているのだろう。

 周囲に気を巡らしながら、アレッシェラはただ立っている風を装った。

(さあ、どう出てくる? 私は一人になったぞ)

 もしこれが敵の仕業ならば、今が邪魔者を消す機会と襲ってくるはずだ。先ほど石に塗られていた毒といい、この煙といい、誰かがアレッシェラとレナールのデートを邪魔しているのは間違いない。

(それならば、今がチャンスのはず――)

 そう思ってその場に立っていると、人混みの中から突然背中に固いものが押し当てられた。