引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実は私がスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

 建物から離れたところで、やっと立ち止まり、レナールはようやく自分から手を握っていたことに気がついたようだ。少し決まりが悪い顔で、繋いでいた手に視線を落としてから、慌てて離している。

「し、失礼しました」

「いや、はぐれなかったので感謝をする。おかげで、煙も吸ってはいない」

「そうですか、よかった――」

 アレッシェラが笑顔で答えるのに、レナールにも一瞬笑みがこぼれた。そして、コホンと決まりが悪そうに咳払いをしている。

「では、俺は職員を集めて対応を相談してきます。兄のこともわかるでしょうし。少しだけ、ここでお待ちいただけますでしょうか」

「ああ」

「ちょっと、レナール様。怖かったのに、私とは一緒にいてくださらないの!?」

 甘えた声をあげたのは、後ろから一緒に外に出てきたテディス公爵夫人だ。しなを作るような声に、レナールの目がちらりと後ろに向けられた。

「申し訳ありません。これから俺は煙の原因を探ってきますので、もし馬車を待たせておられましたら、今日はお帰りになったほうが安全かと思います」

 そう言うと、頭を下げて職員たちのほうへと歩いていく。

「もうっ!」

 叫びながら、テディス公爵夫人が両手で赤いドレスを握りしめた。