引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実は私がスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

「大丈夫です! すぐそこから外に出られますから! 皆さんも、煙を吸わないように頭を低くして出口に向かってください」

 後ろからは、白い煙がもうもうと迫ってくる。

 廊下に充満しているのは、かなりな量だ。それでも、その中で自分の手をしっかりと引いてくれるレナールの黒革に包まれた手が嬉しい。

(この人が、私の運命の相手だったらいいな……)

 なんとなくそう思った。頑固者で、一筋縄ではいかないのに、大聖女とは知らないアレッシェラであっても、出会った時から大切にしてくれる人――。ずっと拒んでいるのだって、アレッシェラを守りたいからだ。

 そう思ったから、アレッシェラも掴まれている手の指を伸ばして、レナールの広い手を自ら握った。革の感触でも、繋いだ手が嬉しい。

 幸い、出口はそう遠くはなかったので、まもなく庭の明るい光の中に出た。振り返って眺めてみたが、やはり博物館のどこにも炎は見えない。

「大丈夫ですか?」