引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実は私がスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

「あ、ガラスが!」

「大丈夫だ」

 心配するレナールに答えながら、指でつまんだものを見つめれば、石には間違いないが、ひどく黒光りしている。くんと石の臭いを嗅いだ。

(表面に塗られているのは……毒の一種か!?)

 こんなものが当たって、石に塗られた毒が傷から皮膚の内側に入れば、軽傷でも命の危険に晒されるだろう。

「いったい、どうしてこんなものが」

 アレッシェラが飛んできた石に視線を注いでいる間にも、レナールは周囲を捜すように見回している。

 その姿に、人混みの奥から声が響いた。

「犯人はこいつらだ」

 目を向けると、並んだ人たちの奥から、モーリスが両手に子供の襟を掴みながら、こちらへとやってくるではないか。なぜか背後には、バイオリンを手にした者も連れている。

「兄……いえ、若君様」

 人前なので、レナールが勘当された身としての言葉遣いに変えた。

「兄上だ」

 そのレナールの発言に、モーリスがにっこりと笑って訂正を促す。

 人前で恥を掻かせるわけにはいかないので、渋々、レナールがその呼び方に応じた。

「兄上。犯人とは、ではその子供たちが?」