こんなにかわいい反応を返されるとは思わなかった。今までのアレッシェラの婚約者候補は、みんな腕を組んだら得意満面な様子を隠しもしなかったのに。
振りほどくこともできずに、腕に寄り添うアレッシェラの姿を、照れてどうしようもないような表情で見つめているレナールに、目が吸い寄せられてしまう。
なんだろう、すごく嬉しい――。この人にこんなふうに見つめられるのに、胸が大きく脈打つ。
まるで夕空のように深い紫の瞳だ。アレッシェラと少し似ているのに、ひどく深くて、青みを帯びた色の視線に包まれているのが、とても嬉しくなってしまう。どこからか聞こえてきた柔らかな音色に乗せられたように、レナールの口から言葉がこぼれた。
「あの……俺と腕を組んで嫌ではないんですか?」
「どうして?」
そう答えると、青紫の瞳は心底驚いたように瞬く。そして、ぎゅっと唇が引き結ばれた。まるで、そうしないと嬉しさで顔が崩れるかのように――。
「レナール様……」
どうして、この人といると、こんなに胸が高鳴るのだろう。ずっと、見ていたくなってくる。
耳に聞こえる音楽の音色が甘やかなせいなのか。
甘酸っぱい気持ちになり、レナールに手を伸ばした時だった。
「危ない!」
周囲から聞こえた声に振り返れば、こちらに向かって、まっすぐに飛んでくるものがあるではないか。
それに、咄嗟にレナールの体を押して、自分も一歩下がった。
なにかが目の前を通り過ぎるやいなや、ガシャンと激しい音がして、アレッシェラの側のガラス窓が粉々になる。
間一髪だった。もう少し反応するのが遅ければ、確実に骨を砕いていただろう。
「誰が……」
突然のことに、周囲にもざわめきが広がっていく。その光景をアレッシェラはジッと見つめていた。
