「それは――昔、グラフォーレの職人が開発した機なのです。複雑な文様が織れると評判になり、各国から問い合わせが相次ぎました。今は、それをさらに進化したものを作っております」
「ほう――それは素晴らしい」
近くに置かれていた布地を手に取ってみると、それは百三十年程前に参詣した者たちがよく纏っていた上着の文様に似ている。さらに隣に置かれていたもう少し昔に織られた布は、妹が生きていた頃に、晴れ着として作ってもらったドレスの柄にそっくりだ。
(懐かしいな……)
今では、もう死に別れて話すことすらできない妹だが、とてもよくアレッシェラを慕ってくれていた。思い出す丸い大きな瞳。一緒に暮らしたのは、幼い時だけだったが、今でもその笑顔はよく思い出す。
博物館を歩いて行けば、時々その頃触れた品々に似たものが展示されている。
「こちらの籠は?」
「それもグラフォーレ領で採れる特殊な蔓で編まれたものです。耐久性が非常に強いので、昔から他国にも求められて、今では鞄などにも使われています」
覚えている。自分が生まれた伯爵家で、よく大量の野菜を運ぶのに使っていた籠だ。あまりに大きかったので、客人に会いたくなくて、こっそりと中に入って隠れていたら、兄が上にかけた布を外して見つかってしまったあの籠だ。
「懐かしい。グラフォーレの蔓で作られていたのだな……」
思い出したあまりにも優しい記憶たちに、ふと笑みがこぼれてしまう。
大切な――温かな記憶たち。
愛してくれる父と母がまだ生きていて、兄と妹もアレッシェラと一緒に笑ったり泣いたりしていた。
あまりにも懐かしい記憶に、囚われそうになってしまう。
(いかん、いかん)
ぶんぶんと頭を振ると、昔を思い出していたアレッシェラの顔を、レナールが横からジッと見つめているではないか。
