無理やり来させた――というよりは、実質嵌めたのだから仕方がないが、今までアレッシェラには誰もしなかったような塩対応だ。
(それでも、待っていたのは真面目だからか)
まあ、それならばこの対応もやむを得ないだろうと思いながら、乗るために馬車へ近づくと、側から手袋をはめた手をそっと差し出される。
「段差がありますよ。ドレスだと、足下が見えにくいので掴まってください」
「ありがとう」
乗り気ではないはずなのに、きちんとエスコートをしてくれる。
「心遣いに感謝をする」
「いえ、館の来客に怪我をさせて帰らせるわけにはいきませんから――」
にっこりと笑いながらアレッシェラに手を貸してくれるが、言葉は徹底的に、ただの客相手へのものだ。
自分はこの縁談を少しも望んではいないと伝えるかのように――。
(ふうん)
それが逆に面白くなってきた。
(運命の相手かどうかは知らんが、これぐらい気骨のあるほうがいい)
強引にデートをさせるアレッシェラに、絶対に乗せられるものかという雰囲気だ。
(さて、どうなるか。運命の相手かどうかはともかく、デートが戦いなのは、とても楽しいぞ)
