引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実はスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

 夕食のあと、来客として、一応きちんとした挨拶をしたいという理由をつけて、アレッシェラはガレオにレナールを呼び出してもらった。

 本当は、夕食の時にと考えていたのだが、どうやら普段から別々な部屋でとっているらしい。とはいえ、いつもは招けば、仕方なくレナールも食堂に顔を出すらしいので、今日はそれさえ用事をつけて断ったのは、やはり縁談が絡んでいるからなのだろう。

 ガレオの呼び出しで、応接室に来たのすら渋々だったと予想できるのに、よく磨かれた茶色のドアを開けて近づいてきたレナールは、その様子を微塵も見せない。

(思った以上に礼儀正しい――)

 嫌なのだろうに、おくびにも出さないとは。

 感心しながら、客間から来て待っていたアレッシェラも優雅に頭を下げた。

「先日は助けていただき、ありがとうございました。アレシナ・ロリアと申します」

「ご丁寧にありがとうございます。レナールと申します」

 レナールが姓を名乗らなかったのは、勘当してもらっているからなのだろう。

「ですが、どうかお気になさらないでください。初級魔法でしたし、あの状況ならば、使える者でしたら誰でもすることです」

 なので、と柔らかく微笑みながら続ける。

「その件につきましては、もうこのお礼で十分です。どうか、ご領地に戻ってお幸せにお暮らしください」

(どうやら、徹頭徹尾婚約をするつもりはないらしい)

 それどころか、一時も早くアレッシェラをこの館から立ち去らせようとしている。

(面白い――)