「危ない!」
後ろにいるルイサの悲鳴とともに、ヘスーオンの牙が二人へと迫った。
(しまった!)
腕を取られているので、髪飾りを引き抜くことができない。
(せめて、奥方様には怪我がないように――)
走っても、この近距離では逃げることはできないだろう。ヘスーオンと、アレッシェラの腕を引っ張っているエディットの間に体を入れて、覆い守ろうとする。急いだので向きを変える際に、アレッシェラの左手が茂みに引っかかるが、かまわずにかばった時だった。
「――――!」
なにかの呪文の詠唱が聞こえた。
同時に、キンとした音が三人を包む。襲ってきたヘスーオンの体が、その音に弾かれてバシンと草の上に投げ出されていく。
(え! なんだこれは!?)
一瞬、背筋を襲った感覚に、慌てて周囲を見回す。すると今歩いてきた方角から声がするではないか。
