引き裂かれた恋人を捜す大聖女は生贄結婚をすることになりました! ~実はスパダリ大聖女といわれているのは、ご存知ないですよね?~

 唸り声に目を向ければ、泉の奥にある繁みからは、獅子の姿をした動物が飛び出してくる。

 体つきは似ているが、その顔の回りを覆っている鬣の一本一本は蛇だ。

 それらが何十という瞳を光らせながら、アレッシェラたちに向かって襲いかかってくるではないか。

「魔獣――ヘスーオン」

 咄嗟に判断した相手に、アレッシェラは髪に巻き付けた宝石の連珠へと手を伸ばす。薄い金髪の一部を巻きながら、腰の下まで繋がる珠を手に取るよりも先に、後ろにいたエディットが腕をがしっと掴んだ。

「奥方様!?」

 驚いて、咄嗟に振り返ってしまう。

 しかし、その向こうで腕を掴んだエディットの顔は必死だ。

「急いで、逃げてください!」

「いや、私は――」

「アレシナ様は、レナールと結婚してくださる方。どうしてヘスーオンがこんなところにいるのかはわかりませんが、ここでアレシナ様を傷つけさせるわけにはいきません!」

 今までの穏やかな雰囲気ではない。息子を大切にしてくれる者を、母として、必ずや守るという覚悟に満ちた表情だ。

 それに一瞬、アレッシェラの視線がエディットへと縫い留められた。

 だが、その間にもヘスーオンは、地を蹴って、こちらへと躍りかかってくる。