「では、本当にレナールとの縁談を受けてくださったのですね!」
「なんと……! 父から話を聞いた時は驚きましたが、こんなにも美しい女性が、道中でレナールを見初めてくださるとは……! 兄として、心から感謝いたします」
二人とも初対面だから必死で抑えているが、顔中が輝き、本音ではその場で踊りだしそうな雰囲気だ。
よほど、レナールのことが心配だったのだろう、心から歓迎してくれている。
(――しかし)
くるりとあたりを見回しても、肝心のレナールの姿は見えない。
「あの、レナール様は……」
控えめに尋ねると、ガレオが少し慌てている。
「それが……出迎えるように言っておいたのですが……。帰ってから連日どこかに出かけておりまして」
「なるほど」
(逃げる気だな!)
どうやら婚約については、ガレオから聞いていたとおりの人物らしい。
(まあ、自分のせいで人が死ぬと聞けば、乗り気になれないのは当然だろうが……)
無礼な男と、こちらが断りやすくする口実を作るつもりなのかもしれない。それを察したのだろう。
「あの、すぐに帰ってまいりますので……!」
母親のエディットがうろたえたように口を開く。
