どうやら話している間に森を抜け、人里へ入ったらしい。
そのまましばらく馬車は道を走り続け、やがて村を越えた先にある街へ辿り着くと、奥にある立派な屋敷の前で車輪を止めた。
「ようこそおいでくださいました!」
馬車が門から現れて、すぐに屋敷の外まで出迎えに来たのは、グラフォーレ辺境伯爵のガレオだ。
停まった馬車の横まで来て、降りるアレッシェラに笑顔で頭を下げている。
「こんな遠い地までありがとうございます! お疲れではございませんか?」
「いや、むしろ久々の馬車旅で楽しかった」
アレッシェラが令嬢らしいドレスで降りながらそう微笑むと、相手も安心したのだろう。すぐに一緒に出迎えにやってきていた者たちを指し示す。
「ご紹介いたします。私の妻のエディットと、長男のモーリスです」
「初めまして、しばらくお世話になります。今回レナール様の婚約者となりましたアレシナです」
「アレシナ?」
こそっと深緑の侍女の服を纏ったルイサが囁く。
『偽名だ。術をかけた者が近くにいるのなら、正体がばれるわけにはいかないだろう。グラフォーレ辺境伯爵にも協力を頼んで、家族にも帝国貴族の令嬢ということにしてもらっている』
心話で返す。その間にも、目の前で頭を下げていた二人の顔は、パッと輝いた。
